小学校就学によって子育てが変化する
お子さんの入学は嬉しい一方、「小1の壁」に悩む親御さんも多いでしょう。仕事と子育ての両立が難しくなる「小1の壁」によって、キャリアを中断してしまうケースは少なくありません。
「小1の壁」とは
共働き世帯やひとり親世帯などで、小学校入学を期に、仕事との両立が難しくなることを「小1の壁」と言います。
保育園時代よりも子どもを預けておける時間が短くなること、保護者の負担が増えることなどが主な原因です。
保育園時代は早朝保育や夜間の延長保育を利用することで、長時間の仕事に対応することができました。しかし小学校にあがると、登校時間が親の出社時間よりも遅くなる場合が多くあり、そのときの対応策がありません。
また、下校時間も早いので、学童クラブを利用できたとしても最長で19時までなど、お迎えが間に合わない問題が多く出てくることがあります。
※22時過ぎまで預かってくれる民間の学童クラブもあります。
さらに、企業側の問題もあります。時短勤務などの制度を利用できるのが「小学校入学まで」としている企業は少なくありません。
他にも、保育園時代は「食事や間食、遊び、学習」など生活全般を委ねられたのに対して、小学生になると、その年齢に応じた自立が促され、それを最初は親がサポートすることを求められるため、保護者の負担が増えます。
学童クラブの入会審査は、フルタイム勤務の人や職種を優先するため、利用できるか不安があった。結局、パートの仕事は見つかり、学童クラブも利用できたが、夏休み中など長期休暇のお弁当持参や子どもが学童クラブへ行きたがらなくなったことで、1年経たずに仕事を辞めてしまった。
こうした「小1の壁」によって、キャリアを諦めたり、仕事を辞めたりするなどの問題が生じています。
国の取り組み「新・放課後子ども総合プラン」
「小1の壁」問題を解決するために、国は「新・放課後子ども総合プラン」を実施しています。
厚生労働省所管の「放課後児童健全育成事業(学童クラブ)」と文部科学省所管の「放課後子供教室」「居場所事業」をあわせて、「新・放課後子ども総合プラン」として、総合的な放課後対策事業を行っています。
これによって、学童保育(学童クラブ)に入れなかった待機児童問題が、受け皿の拡大によって緩和されつつあります。
「学童クラブ」は保護者が労働等により昼間家庭にいない、小学校に就学している児童が対象ですが、「放課後子供教室」は地域の子ども全般が対象となっています。そのため、共働き家庭のみならず、すべての家庭の放課後対策として機能する点は、子どもを持つ親としては助かる制度です。
ただ、施設が足りない、近くにないなど利用できないケースも多く、まだまだ取り組み途中といった印象です。
「小1の壁」を乗り越えるための5つの対策
- 働き方を見直す
フレックスタイムや時短勤務を利用できないか、リモートワークができないか。働き方を変えてみるのもいいかもしれません。
自分のライフワークを見直す機会を設けられると良いでしょう。 - 民間の学童クラブを利用する
時々、学童のお迎えに間に合わないという場合は、遅い時間まで預けることができる民間の学童保育を合わせて利用するとよいでしょう。
⭐︎送迎と習い事のサービス
学校と自宅の送迎サービスが付いている場合もあるので、送迎の負担が軽減できます。また、習い事の代わりとなる学習プログラムが用意されている学童もあります。「習い事をさせたいけど、送迎ができないために断念している」という家庭にとっては利用する価値があります。 - ファミリー・サポート・センターを利用する
ファミリー・サポート・センターとは、子供の送迎や預かりなど、子育ての「援助を受けたい人」と「援助を行いたい人」が、地域で相互援助を行う仕組みです。センターは自治体から委託を受けた法人が運営しています。 - 親同士の繋がりを持つ
同じ小学校に通う子どもの親同士で繋がりを持つことは「小1の壁」を乗り越えるために有効です。情報を共有することで、スムーズに準備が進んだり、悩むことが減ったりします。また、お互いに助け合う関係を築いておけば、急用ができた時に預かってもらえるかもしれません。 - 子どもとのコミュニケーションを大切にする
小学校1年生はまだまだ親の助けが必要な時期です。しかし、保育園時代のように子どもの様子を事細かに報告されることはありません。そのため、子どもの様子を知るためには、子どもとコミュニケーションをとって知るしかありません。
「学校での様子、お友達のこと、勉強のこと、困っていること」などを傾聴して汲み取ってあげましょう。子どもとしっかりコミュニケーションを図ることは総合的に負担の軽減や虐待防止にも繋がります。
最後に
「小1の壁」によって、正社員の仕事を辞めて、パートに切り替えた方はこれまでにたくさんいたと思います。
「あの時、仕事を辞めなければよかった」とあとから後悔しないためにも、「小1の壁」を乗り越えるための対策を参考にしながら、利用できる制度はトコトン利用して、仕事との両立を目指してほしいと思います。
参考文献
・「新・放課後子ども総合プラン」について 東京都福祉保健局
・新・放課後子ども総合プラン – 学校と地域でつくる学びの未来
・ファミリー・サポート・センター事業 東京都福祉保健局
・大学卒女性の働き方別生涯所得の推計 ニッセイ基礎研究所