神経伝達系における障害の一つで、複雑なものになると他人から気づかれにくいこともあります。
一見、癖のように見えますが、どうではない可能性にも視点をおいてみましょう。
それでは、チックについて理解を深めてみましょう。
自分の意思とは関係なく、体の一部が瞬間的に素早く動いたり(運動チック)、声が出たり(音声チック)する神経の発達に関わる病気です。
チックは大きく分けて、運動チックと音声チックの2種類があり、それぞれに単純性と複雑性があります。
- 運動チック:体の一部が動くチックです。
- 単純運動チック:素早いまばたき、小刻みに首をふる、肩をすくめる、顔をしかめる、鼻をピクピクさせるなど、一瞬の単純な動きです。
- 複雑運動チック:顔をしかめながら首を振る、ジャンプしながら手を叩く、特定の物を触る、無意識に人の真似をするなど、いくつかの動きが組み合わさった、やや持続時間のある動きです。
- 音声チック:声や音が出るチックです。
- 単純音声チック:「あっ」「うっ」などの短い音、咳払い、鼻を鳴らす、喉を鳴らすなどです。
- 複雑音声チック:汚い言葉を発する(汚言症)、他人の言葉を繰り返す(反復言語)などです。
チックの原因は、まだ完全には解明されていませんが、脳の発達や神経伝達物質の異常などが関与していると考えられています。遺伝的な要因やストレスや緊張からくることも指摘されています。ドパミン、セロトニンは行動や情緒面に影響を及ぼす脳の代表的な神経伝達物質です。チックの発現には、脳の連絡を行うドパミンD2受容体の過感受性が関与するといわれ、その基盤には遺伝素因があると推測されます。ストレスはチックを悪化させる要因にはなり得ますが、直接的な原因ではありません。
チックは経過によって以下のように分類されます。
- 一時性チック障害:チック症状が4週間以上1年未満続く場合。多くの場合、自然に治まります。
- 慢性チック障害:運動チックまたは音声チックのどちらか一方が1年以上続く場合。
- トゥレット症候群(またはトゥレット症):運動チックと音声チックの両方が1年以上続く場合。複数の運動チックと一つ以上の音声チックが、症状が途切れる時期を挟みながら1年以上続く場合に診断されます。
トゥレット症候群は、チック症状以外にも、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や強迫性障害(OCD)などの症状を伴うことがあります。
チックの治療は、症状の程度や日常生活への支障の程度に応じて、薬物療法や行動療法などが行われます。
- 薬物療法:チック症状を抑える薬(抗精神病薬など)や、合併するADHDやOCDの症状を改善する薬などが用いられます。薬物療法は、症状が日常生活に支障をきたす場合に考慮されます。
- 行動療法:チックが現れる前に感じる衝動に気づき、その衝動を抑える方法を学ぶ習慣逆転法や、曝露反応妨害法などが行われます。チックに対する認知行動療法(CBT)は、チックの軽減に有効であることが示されています。
- 環境調整:周囲の理解を得て、チックが出やすい状況を避ける、リラックスできる環境を作るなども重要です。
チックの治療が必要になるケースは生活面や社会面において支障をきたす重度の場合です。
子どものチック症状でご心配な場合は、小児神経科や児童精神科を受診されることをお勧めします。チックは、お子様の意思でコントロールできるものではありません。周りの大人が、チックを叱ったり、無理に止めさせようとしたりすると、子どもは精神的な負担を感じ、症状が悪化することもあります。チックについて正しい知識理解を持ち、温かく見守ってあげることが大切です。チックは、お子様の発達過程でよく見られる症状の一つです。一過性の場合が多く、発達と共に軽減していくこともあります。過度に心配することなく、お子様の成長を見守ってあげましょう。多くの場合、成長とともに自然に軽快していきます。適切な治療と周囲のサポートがあれば、チックがあっても充実した生活を送ることができます。
〜以上!チックについて!でした〜